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『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』音楽家・高見龍氏インタビューの秘話がすごかった件

『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』音楽家・高見龍氏インタビュー 今明かされる『EVE burst error』『YU-NO』秘話がめちゃくちゃすごかった件

何度も繰り返し読んでしまいましたわ!
ゲーム制作の裏側、しかもこういう負の内容も含めてとなると表に出てこない事が多くて、ファンとしてはやきもきする事も多く、この証言は超貴重なんです。特にelfはガードが固いというか、晩年になってもこの手の生証言はほとんど出てこなかった。
なので具体的に掘り下げていって、当時のエロゲーマーから今の若いオタクの方まで、届け!菅野ひろゆき&梅本竜の功績!!!

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■MAGES.の浅田誠プロデューサーの本気度がすごい!
>浅田さんは昔から梅本くんの知人で、「『YU-NO』のリメイクを作れるくらい偉くなって、その音楽を梅本竜にやらせる」というのは彼の決まり文句でしたが、本当にリメイクを作れるくらい偉くなっちゃった

有言実行すげえぇぇ!! 実際、我々は諦めていたんですよ。YU-NOは今は亡きPC-98、セガサターンでしか遊べず、Windows95版はelf缶という特別通販でしか手に入らない代物だった(まあ、どれもお金に糸目をつけなければ買えるけど、動くハードを引っ張り出すのも大変)
あの不朽の名作を、遊びたくても遊べない。多くの人に伝えたくても伝わらないもどかしさを、ゲーム業界の方が本気で動いてくれた!

■『EVE』のハッキングシーンの曲は高見龍氏が作っていた!
>作曲者本人が言いますけど、あれは梅本くんのフレーズが面白くて30分で作った曲
EVEと言えばこの曲というくらいの名BGM! PC98の貧弱な音源で、ここまできれいな旋律が出せるのかという衝撃で当時カセットテープに録音して擦り切れるまで聴きました。これが30分かよ!

先日NHKで放映されたドラクエ30周年特番でも、すぎやまこういち先生がドラクエのオープニング曲を10分だか20分だかで書き上げたってコメントしてて驚きでしたが、創作のクオリティに時間は関係ないのだろうか。
いや、違うと思います。すぎやま氏も高見氏も、それまでの人生で膨大な時間、作曲と向き合ってきたからこそ、時間のない中、あるいはリラックスした気負いのない中、ふと舞い降りた神の旋律なんでしょう!

■梅本竜氏の失踪!?
>梅本くんはelfで缶詰になってなかなか帰ってこなくて、彼はどんどんやつれていきました。そしてとうとう疲労が頂点に達して、ちょっとしたことで彼は失踪してしまうんです

菅野(剣乃)AVGといえば梅本BGM、というくらい密接な両者の関係だと思っていたんですが、ここで亀裂、そして物理的な離脱まで起こっていたことにショック。その後の高見氏の再会まで一年、そこからしばらくして菅野氏は梅本氏にオファーを取るまで別れていたとのこと。

>2人は相思相愛でしたが、結果的には世間がそれを認めなかった。打診があったのは事実ですが、いろいろあってアーベル行きはなくなりました。
現場に復帰させたくても、一度逃げたスタッフを信用できない人がアーベルの立ち上げか、出資側にいたってことなんでしょう。なんとも不幸としかいいようがない。
ただビジネス面で見た時には、逃亡前科ありの信頼できない人間に難色を示したというのはわからない話じゃないですよね。ただねぇ……社外スタッフとしてでも組むことはできなかったのかと……。
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■elf内で孤立していた菅野ひろゆき
>菅野さんはelfでは孤立してましたね。理由は単純で、elfは蛭田さんのカリスマで集まってきたスタッフの人たちの会社だったから。
elfのスタッフからしたら、外からきた人間が突然役員になって命令してきたということで、トラブルがいろいろあったという話を梅本くんからも菅野さんからも聞いています

コンプティークだったかエロゲー雑誌だったか忘れましたが、「今後は蛭田と菅野(剣乃)の二輪で、交互に作品を作っていく」この言葉に当時、我々はどんなに歓喜しただろうか!
しかしYU-NO一本で退社したわけはそういうことだったんですね。そんなに冷遇されつつもYU-NOを作り上げた手腕は凄まじいのですけど。
菅野氏はYU-NOに関して、いろんなところで未完成だっておっしゃっていて、本来は異世界編でもA.D.M.Sをやりたかったそうなんですけど、そんな完全版が見てみたかった。

>本来、A.D.M.Sは二次元ではなく三次元だったんです。つまり現代編、異世界編というのは本来は別の次元の未来だったかもしれない。そうなると当然、過去もある。当初の構想では三次元を宝玉で移動するという話になったんです。
もしも菅野氏がご存命で、MAGES.とのタッグだったら、これが実現できたかもしれないんですよ! でも、儚い幻となりましたねぇ…。

それともう一つの重大な事実がここにあります。かつて「西のアリスソフト、東のelf」と言われるほど大手メーカーだったelfの衰退の原因をここに見ることができます!
蛭田氏のカリスマでクリエイターが集まっていたからなんですね。だから蛭田氏が製作から抜けた途端、坂道から転がり落ちるように凋落していくわけです。
蛭田氏の書く主人公は破天荒で、『同級生』でも画面のいろんなオブジェクトをクリックすると独り言を喋るんですが、それがもう「うんこちんちん」連発する狂人のたわ言なんですが、それが腹を抱えるほど笑えるという超絶センスの持ち主でした。

>蛭田さんがアドベンチャーゲームでもたらした、破天荒で常識知らずの主人公キャラクターですよね。菅野さんは蛭田さんの次の世代だと思うんですよ。同じ世代ではなく、明らかに蛭田ゲームフォロワーだと思うんです。
これは当時から散々言われてました、蛭田主人公と菅野(剣乃)主人公の共通点。やはり影響を受けていたことがほぼ公言された形に(他の雑誌で言ってたらごめんなさい)蛭田氏引退の理由もぜひ明らかにして欲しいなあ。

■ドスケベなマコトシナリオは不本意だった
>菅野さんは『DESIRE』の時期にすでに『EVE』と同じようなマルチサイトの構想があったんですが、『DESIRE』のマコト編をほとんどエロシーンに改変させられたわけです。
プレイした人ならおわかりの通り、真面目に進むSFミステリのアル編を遊んでワクワクした後にマコト編を遊ぶと、ドスケベ女の寝取られ日記みたいな全編エロが続くわけです。いやーアルと会話してるマコトのスカートから精液が垂れてるシーンとかエロかったなあ…。

でもそれは、菅野氏の本意ではなかった、まあ、そりゃそうだ(笑) その後のティーナ編で感動シナリオが用意されてるんだから、どう見てもマコト編が浮いてるわけで。
サターン版ではマコトの調教が催眠に変わっていて、ここでも本来菅野氏がやりたかったマルチサイトは実現せず。
でも本来やりたかったマコト編、というのも構想はあったはずで、やはりこれも幻となってしまいましたね。

■SFや推理小説に傾倒していた一面
>日本の作家は推理小説が多かったです。島田荘司さん、綾辻行人さんとか、横溝正史の金田一シリーズの話がよく出ましたね。ああいう因習というのは心のどこかにある感情を刺激するもので、あれは異世界の話なんだけど、どこかで現実になる可能性があることが一番怖いという話をしていました。
ここは菅野作品の原点、源かもしれない。ここの因習は『エクソダスギルティー』に引き継がれたんでしょうね。

■ギャルゲーの転換期
>『同級生』ですら本来はメインヒロインはいて、後のキャラクターはサブヒロインなんです。ところがキャラクタールートがあったから、メインヒロインを抑えてサブヒロインのほうが人気が出ちゃった。
そこで蛭田さんは限界を感じたと思うんです。キャラクターが前に出すぎてしまうと、そのキャラクターを中心にしたストーリーしか書けない。背景にある何か深いテーマを描こうとするストーリーものが書けなくなってしまう。

『ときめきメモリアル』でも、藤崎詩織よりも虹野沙希の方が人気が出た事件がありましたね。
つまり、ここでエロゲーの転換期が起こってるんです。ヒロインはストーリーを見せるための花から、プレイヤーが好きになってもらうための主目的へ。ストーリーの方が舞台装置になっていった。
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これ以降のオタクコンテンツ、特にアニメやライトノベルも、キャラクターの魅力>ストーリーの構造が大半を占めます。それが良い悪いではなく、時代の流れなんです。
例えば『ToHeart』も、髙橋龍也氏はテンプレでベタなラブコメの総決算のつもりで書いたそうなんですが、実際にはそんなキャラ主導の物語が売れに売れて、そのフォロワーが無限に出てくる結果となった。

>一方で蛭田フォロワーである菅野さんのキャラクターは、あくまでストーリーを描くためのコマで、真逆なんです。菅野さんのゲームは運命に翻弄される少女が中心で、主人公はそれに干渉する存在。それ以外のキャラクターはそれらの真実を知るきっかけになるだけの存在です。キャラクターよりもストーリー重視で、キャラクターはストーリーの装置でしかない。
菅野氏はYU-NOの後に『エクソダスギルティー』を出すんですが、まあ、あまり評判は良くなかったんですね。僕も、イマイチでした!(ごめん)
ストーリーが前に出すぎていて謎かけもいらんかなーとか、まさにおっしゃる通り、ヒロインもその姉も、真実へ繋がる話の案内人でしかなかった。これも80年代に出ていたら評価は変わっていたかもしれません。


>僕はそれになれるとは思えなかった。菅野さんを見て、同じレベルで仕事をやれって言われたら死んじゃうから無理だと思いました。助言はできるし、いろんな提案もできますが、それ以上は求めないでくださいと菅野さんに言ったんです。まさか後年まで接触できなくなるほどとは思いませんでしたが。
ここで高見氏は縁を切られますが、いやー……頑固者っすね!(笑)
そういう偏屈さも、職人っぽいなあと感じます、ずっと洞窟で武器を打ち続けてるドワーフみたいな。

>菅野さんはこっちがこわいと思うくらい吸収しようとする貪欲さがあります。あれは本当に常人にはついていけないレベルで、だから菅野さんみたいに天才についていける人は限られてしまい、それによって菅野さんの後年の評価があったのかなとも思います。菅野さん自身としては、他の人に自分と同じ気持ちで作品に本気で関わってほしいところがあって、菅野さんにとっても梅本くんっていう存在は同じ温度で仕事ができるパートナーだった。
菅野氏が人生のすべてを創作に投げ打つ姿勢がナマの証言で得られたという、ここも今回のインタビューで重要なポイントだと思います。
優秀さを越えた「超人」クリエイターは、どこか一線を越えているか、狂人だというのは、私も過去に様々なクリエイターにインタビューしていてもすごく感じていた事です。
それは常人が「これ以上はヤバイ」と感じるブレーキを踏まずに走り続けられる方で、おそらくそれが身体への酷使にも繋がって、早世されたんだと思います。そして梅本さんが同じタイプだとも。
図らずに二人して40代でお亡くなりになってしまわれるとはなあ……人類の損失だと嘆かずにはいられない!

YU-NOのPS4版とVita版が3月16日発売だそうで、Vita版EVE(この移植は良かった)のような素晴らしい移植度を期待して、座して待ちます!

※まあそれにしても今度出るYU-NO、カニバリズムとか援交とか、どう処理されてるんだろうねぇ……。当時のエロゲって、そういうタブーもどんとこいっていう自由な表現や風潮があって、その空気が僕らを惹きつけたんですよね。

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